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2007.10.29. 開設  日々徒然と二次創作、オリジナルなどを書いていこうかと。  コメント大歓迎、荒らし厳禁。 詳しくは説明にて。
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月詠にリクエストして頂いた作品です。
感謝!


BLEACH(サイト様設定/一護総愛)



+ + + + + + + + + +


雨のあがる日

 

濡れた髪は暗がりでも目の覚めるような鮮やかさだった。
盛大な音を立てて崩壊した培養器から吐き出されるように、しかし重力に逆らい、その身体は叩きつけられることもなく。
淡く発光したまま床を濡らす液体の上に、華奢な肢体が羽根のように降り落ちる。
 「霊子に溺愛される体質は相変わらずか」
 「総隊長、」
 「全員入って参れ。封印が解けた今、阻むものは何もない」
誇りの詰まった白い羽織が濡れるのも構わず彼は姉のすぐ傍に膝を着き、肩を掬うように抱き上げる。
特殊な粘度を保っていた培養液故に、その姿は肌を損なうこともなく封印される以前のまま。
貴族出自の姫だというのに屋敷に籠もることを良しとせず、度重なる戦いの末に負った傷跡さえも。
 「卯ノ花」
 「はい」
 「お主の斬魄刀であれば、この傷は治せるか」
 「幾分か古いものとお見受け致しますが…決して不可能では御座いません」
貴族とは名ばかりの、没落寸前だった家は隊長格をふたり輩出することで勢力を取り戻した。
真っ先に護廷に名を連ねた姉は王族特務とさえ肩を並べる、霊王の寵愛すら受けるのではないかと噂された零番隊の隊長に。
僅かに遅れて就任することとなった双子の弟は、姉の存在に臆することなく護廷を纏め上げる一番隊の隊長に。
思えば、この時に誰が何と言おうと彼女を前線から外しておくべきだったのだ。
地位も名誉も名声も、当人達が望む望まぬに関わらず集まり、護らなければならないものが沢山ありすぎていた。
特に、名にこそその本質を持つ姉は、尚更に。
 「一護」
起きてはくれまいか。
待つのはもう些か疲れた。
雨の降る日に限ってお前は良く熱を出していたが、あの日は何故か身体が軽いのだと笑っていた。
 『お前を護るために…熱なんて出してらんなかったのかも、な』
熱を出していれば、こんなことにはならなかったのだと言えば彼女は烈火の如く怒鳴るだろうが。
鮮血の雨を浴びるぐらいなら冷たいだけの雫の方がマシだった。
透明なあれは羽織を変色させることもない。
熱が鬱陶しいからと姉は厭うかも知れないが、時には耐えられないほどの穢れを洗い流してくれるような感覚が、決して嫌いではなかったのだ。
彼女が奪われるまでは。
死神にとっての半身は自ら出ずる斬魄刀だというが、自分にとって魂を分けた彼女がそれだ。
傍らにあって当たり前のもの。
例え名を呼び、己の本質となる斬魄刀が寄り添おうとその隙間は埋まることなく。
 「一護」
雨をあがらせてくれ。
未だ全身を叩き付ける赤い雨は、お前にしか降り止ませることは出来ないのだから。

 『重、』

胎の中にいた時から、まだ互いに呼ばれる名などなくとも彼女の声を聞いていた。
頻りに隣から響いていた声が突如として聞こえなくなった瞬間は、それこそあの雨の日のように狂いそうになったものだが。
先に呼吸をして待っていると言われたような気がして。
酷く安堵したものだ。
 「重、」
 「待たせ過ぎだ、この莫迦姉が」
開けた視界に初めて映ったこの世界は。
同じ赤でも曇天の雨空ではなく、先に産声をあげていた姉の髪に良く似た晴天の夕焼け空だった。

 

総隊長の実姉にも関わらず長い封印の果てに眠っていた彼女は、一見では現世に生きる十代半ばの少女だと言っても過言ではない。
虚の毒が残っていては危険だという弟の指示の下、四番隊と十二番隊を股にかけ漸く得た安息。
気が遠くなるような時間を離れていたのだ。
姉弟水入らずで、という卯ノ花の心遣いは無残にも彼女の退室寸前で阻まれた。
 「春水さんも十四郎さんも重の生徒だったのか。こいつの教育はスパルタで大変だったろ」
 「厳しいのは確かだったかな、うん」
 「教育という名の暴力かと思いましたよ」
剣は打ち込まれるは鬼道をぶつけられるは虚の群れに放り込まれるは。
絶対に教師のやることじゃないと思いつつ諾々と従っていたのは将来にそれなりの目標を持っていたからこそで。
恩師の実姉だというのに敬語さえ忘れがちになってしまうのは、彼女の外見が余りにも幼すぎる所為かも知れない。
年齢からすれば祖母と孫にも等しいというのに、だ(事実、彼女からすれば全隊長格はそんな感じで接しているらしい)。
当時を思い出したのか呻く弟の教え子達に、寝台で横になったままの体勢の彼女は眼を眇める仕草で手を伸ばし。
孫か稚い子供を相手にするかの如く、その髪を撫でた。
 「あの、一護さん…俺達の歳で子供扱いは」
 「え、そう?ちょっと嬉しいんだけど」
 「お前だけだ!」
 「えー自分だって嬉しそうにしてたくせに何言ってんの」
枕元できゃんきゃんと騒がれようが、一護は眼を細めて穏やかな表情を崩さない。
記憶は当時のまま進行も後退もしていないので最初こそ軽いタイムスリップをした気分だったが、現在でも零番隊当時の隊員が護廷にいると聞いた。
弟同様かなり外見は変わっているというが、一目で判るだろうという自信が彼女の中にはある。
同時に、半身の部下(同僚と言うべきなのだろうか)とも会話をすることで時間の流れを埋めて生きたいものだ。

 『初めまして、か?一つのものを護るで一護という。重が、弟が世話になってるな』
 『誰がこやつらの世話になるか。寧ろ儂の方が世話をかけられとる』
固く閉じられたままだった瞼から覗いたのは澄んだ琥珀色。
暫し虚ろな光を灯した後、随分と姿の変わってしまっただろう弟を一目で悟った。
続いて控えていたらしい見覚えのない顔に首を傾げ。
護廷も様変わりしたなあ、と時差ボケしたような声を発して冒頭の台詞に戻る。
 「俺の同僚だった奴等も色んな奴がいたけど…今の護廷も結構個性派揃いだよな」
先程から沈黙を貫いたままの弟を振り返れば、肩を竦められてしまった。
 「昔じゃ考えられないぐらい女の人も増えたし、まさか俺の最年少記録が塗り替えられるなんて思わなかった」
 「自分がどれだけ寝過ごしていたか判ったか」
 「痛感してるとこだ、いま正に。なぁ、今度みんなに逢わせてくれよ。隊長格の名前とか顔が知りたい」
 「他人の顔と名前を覚えるのが心底苦手な奴が何を言うか」
 「そんなことねぇよ!…多分。春水さんと十四郎さんと、さっきまでいてくれたのが烈さんだろ?あとあのちっさいのが冬獅郎で、」
 「当人の前では言ってくれるなよ、くれぐれも」
 「何で?」
腹の底から判りません、と言わんばかりの相変わらずな姉に眩暈を覚える。
鈍い。
感情の機微には敏感な性質であるはずなのに、その本人を前にしなければ鋭さは半減以上。
観察力だけが鋭いということだろうか、と思ったのはその場にいた男達全員だったという。

 

 『俺、ちょっくら死神の隊長になって来るから。追っかけて来んなよ、重』
 『姉上…何をまた突拍子もないことを』
 『姉上って呼ぶのいい加減にやめろ。俺の方が何分か先だっただけだろ』
敬語もやめろ、そんな大した家でもないのに、双子なのに変だと始終頬を膨らませる。
姉らしいと以前ならば笑えたはずなのに彼女が格上の貴族と婚姻が決定された途端、一族中の顔色が変化してしまった。
見目の良い姉はさぞかし貴族でも話題になっていたのだろう。
家の存続がかかっているのだと一族から糾弾されれば、力を持たない子供にできることなどなく。
距離を置き、嫁に行くその時まで姉を幸せを願ってやれと言われた。
 『隊長になればあんな奴に嫁ぐこともねえだろ。一年だ、一年で隊長に伸し上がって帰って来る』
 『本気、ですか』
現在十五の姉は、十六の成人と共に婚儀が執り行われる。
護廷の隊長格ともなれば経済的にだけではなく、世間的地位により自身は勿論、家にも余波は及ぶだろう。
頭の堅い貴族は基本的に『女は家にいるもの』という理念が強いから、もし仮に初の女性隊長なぞが誕生した日には渋い顔をするに違いない。
実家からすれば不毛な縁を結ぶ必要がなくなり、相手側も毛色の合わない娘を血族として迎え入れずに済む。
良いこと尽くめではないかと、周りの大人達からすれば安易な考えだと哂われそうなことを、子供である自分達は信じた。
信じて、即行動に移せることが、子供ならではの強みである。
霊圧も並々ならず(その所為で食費が嵩むと家人には渋面を作られたが)、腕も達者だったことが拍車をかけた。
 『俺も行きます』
 『駄目だ』
 『確率は高い方が良いでしょう。貴女がもし挫折しても、俺が隊長になっていれば問題ない』
 『俺に一回も勝てない奴がなれるわけないだろ!』
 『剣の腕だけでしょう!死神は鬼道というものも使えないと駄目なんですよ!』
霊力のコントロールが悲惨な姉は、咄嗟に言い返す言葉がなかったのかぐっと唇を噛み締め恨めしそうな眼を向けて来る。
 『今まで一緒だったんです。今更置いて行くとかはなしでしょう…』
例えそれが護廷であろうが嫁ぎ先であろうが。
胎の中からずっと一緒にいたのは他でもない自分なのだ。
横から半身を掻っ攫われてなるものか。
 『脚とか引っ張っても庇ってなんてやらないからな』
 『誰にものを言ってるんです』
 『敬語もやめろ』
 『悪かったよ、一護』

誰が立ちはだかろうと、繋いだこの手だけは離さない。

 

END

 

 

 


言い訳。

鎖終さまに捧げさせて頂きます総隊長姉設定。
前にも書かせて頂きました同じ設定が捧げもの短編の方に御座いますので宜しければそちらを復習してからの方が良いやも(笑)。
妙に反応が良くて機会があれば書きたいな、と思っていた矢先にリクエストを頂きまして。
有難う御座います貴重な体験でした(笑)。
前後がバラバラな話展開ですが、気合で変換して頂けたら幸い(殴られろ)。
少しでも楽しんで頂けることを祈りつつ。

06.9.1.

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性別:
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職業:
学生
趣味:
ネット、読書、写真
自己紹介:
腐のつく属性。でもノーマルも大好き。

成人者の高卒者。
最高学歴は専門学校です

熱しやすく、冷めにくい。むしろ、いつも煙はでている(笑)
性格は社会的には真面目(というより面倒見がいいらしい)、でもすごい優柔不断で酷い奴。自分に自信が持てない。


【現在一押しジャンル】


【近状】
高校卒業。
4月から歯科衛生士の専門学校

ブログ統合終わってるのに、いい加減削除しようよ自分。


【在中ジャンル】
遊戯、復活、ギアス、APH、彩雲国、マイネ、鰤、セラムン、ギアス、名探偵、愛盾21、ぬら孫、ポケ、TOA、夏戦争


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