05 失ったものを手に掴み鮮やかに笑っていた

幸福論

遊戯王　　

GX最終回までの一週間で書き上げ(連作)
総タイトルは完成後。
各タイトルはサブ。

今の自分が、どんな顔をしているかはわからない。
でも、ユベルと遊戯さんの顔をみるとなんとなくわかる。

(ちょっと、恥ずかしい気もするけど…)


ユベルは今までの微笑みとは違う、なんだか悪戯に成功したような…喜びに溢れた顔で笑っている。
遊戯の顔も、同じ様な顔だった


「さぁ、君の仲間の元に帰りな」
「あ、あの…その俺達」
「大丈夫、君達が普通の人じゃないのはわかるよ」
『…何故だ？』
「だって、君達と会ってから時間が進んでいないし誰にも会わないなんておかしいだろ？」
「あ…」
『確かに』

遊戯が笑いながら公園の時計を指差す。
十代もユベルもその事をすっかり忘れていたのかやや照れた様に頬をかいていた


「常識では考えられないことには、慣れきっているからね」

ウィンクしながら遊戯が得意気に言った。


「本当にありがとう御座いました。俺、あなたとデュエル出来て本当によかった」
『私も礼を言う。有難う、決闘王』
「改めて言われると照れるな…それに、僕は君とデュエルをして楽しかった。それだけだよ」

「また、君とデュエルできるといいな」
「俺も…その時は、勝ちますからね」
「楽しみにしてるよ」


ゆっくりと時計の針が進む。
十代とユベルの姿がゆっくりと消えていく。

「君達の、名前…教えてもらってもいい？」
「！…十代、遊城十代です！」
『ユベル』
「ありがとう」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
そう笑った遊戯の顔が十代達のみた、その世界での最後の映像(ビジョン)となった。


消えたのは遊戯だったか、それとも十代達だったのか。



ただ遊戯の胸の千年パズルが鈍く光っていた。







目を開けば、そこは武藤遊戯のデッキが展示してある部屋であった。
そのケースの隣に、佇む一人の影。


「おかえり」

その影がゆっくりと声をかける。
やや低くなった、けれど何処か雰囲気が残る声。


「君が会った彼と、俺は同じであり違う」


首に下がっていない千年パズルに気になり目を向けると彼は笑って答えていた。
自分が疑問であった事を、何も言わずとも答える彼はまるで全てを知っているかの様に。

(彼は彼でありながら、彼ではない)


微笑みながら手が伸ばされる。


「改めて、卒業おめでとう」
「ありがとう、御座います！」


十代がその手を握り返す。


「遊戯さんは、今旅をしているんですよね？」
「そうだよ。表舞台には立たないデュエリストもいる。それに、色々なものを見たいと思った」
「俺も、一緒に行かせて下さい！」


遊戯が目を丸くする。
その表情がさっきの表情と違いすぎていて…デュエルをした彼と同じで思わず十代とユベルは笑っていた。


「大変だよ？」
「覚悟はできてます。そして、絶対あなたにデュエルで勝ちます」
「俺も、そう簡単に負けてるつもりはないよ」
「わかってますよ。それでも」


遊戯はやや困った様に笑いながら…それでも、何を言っても変わらないとわかっているようだった。


「じゃあ、これからよろしくね十代君。それにユベル…みんなも」


遊戯は十代に、そして姿を現したユベルやネオス…十代のモンスター達に笑っていた。


「俺の方こそ、よろしくお願いします。遊戯さん、それにみんなも！」

同じ様に遊戯と、そしてその後ろに現れたブラックマジシャンやサイレントマジシャン…遊戯のモンスター達に笑顔で挨拶した。

クリボーとハネクリボーは早速戯れたり、モンスター同士も頷きあったりする様子を見て二人は声をあげて笑っていた。




「じゃ、行こうか」
「はい！あ、でもその前に仲間のところに行っても良いですか？」
「もちろん」







鮮やかに笑う彼に、驚き喜び、涙し笑う。
その傍にいた彼に、驚き喜び、涙し笑う。





これから先、星数ほどの決闘をすることとなる一人の決闘者がいる。
勝つことも、負けることもあった。それでも楽しそうに。
負けることも恐れをせず、負けても「次は勝つ！」と言っていた。

闘った後の彼は、眩しいほどの笑顔で高らかに言った。


ガッチャ！









Fin.


＝＝後書き＝＝
王と挑戦者が共に歩む。
永久に歩むことはないだろう、けれども。
二人の途が交わる確かな軌跡があった。


失ったものを手に掴んだ。そして、新たなものを手に取った。
不敵に、時に鮮やかに笑う彼。
新たな挑戦が、始まる。


十代にとっても、遊戯にとっても新たなものとなればいい。
書けたら…というか番外書く予定。中途半端すぎますよねっ！！(←
これ、なんだか意味不明な気がしてならない(気のせいじゃない)

26日、楽しみすぎる！(でも、ちょっと怖い)