吸い込んだ水の泡

鰤　（一護/喪失後/切ない)

あいうえお　お題＜水鏡＞

『あなたに、価値あるものを』



テレビの、ワンフレーズ。
どこにでもあるような、そんな言葉を繋ぎ合わせたもの。
『価値』も『意味』も、他人が決めるものじゃない。

まるで、なかったことのような日々が。
『価値』のないものなんて、思わない。

死に掛けた事も幾度も合って、実際に死んだようなこともあった。
けれどどの戦いも、どんな奴の姿も忘れずに自分は覚えている。

黒い着物の、死神も。
白を纏った、破面も。

願いと、裏切りと、絶望と、希望と、誓いと、掟と、秘め事と
まるで泡のように、数え切れないほどの出来事、全部、全部自分の中に残っている。


いつか、忘れてしまうのだろうか。
この平凡な毎日の繰り返しによって。まるで夢幻であったかのように。
どんなに辛い時間の中にも、笑いあった彼らのことすら。


「会いたい、なぁ…」



□■後書き□■

17ヶ月の喪失期間。
何もかも諦めきれない、忘れないと誓いを立てて。
そして、幾度も逢いたいと願い続けた17ヶ月。