無題

その同級生とは、別に親しくもなく。母親とだって顔は数度合わせたくらいだ。
けれど、母を亡くした私を気に掛けてくれる同級生の母の一人で。
写真を見るまで、誰かわからぬほどで。(記憶力を失った自分が、憎くて仕方ない)

それでも、気に掛けて時折会わす程度でも声を掛けてくれた。
やさしい人だと、知っている。
母を亡くした時とは比べ物にならないほどだけれど、薄っすらと残る記憶に涙がでた。
そしてその場で、私は母を亡くした時に何処であの時何を思い過ごしたか、思い出せないのが悔しかった。

そして式を終えた後、他の母親に未だ気遣われる自分が情けない。
偶然にも同じ系統の病気であったのも、気遣わせる一因だったのだろう。
あの時、自分がどれほど酷かったのか、言葉にする人は極稀で。何も言えず、耐えて笑みをしていたとしか聞いたことがない。
掛けてくれたやさしさを、返すこともできなかった。



母よ、あの子の母よ、あの子の母よ。
どうか共に安らかに過せるよう、迎えてあげて下さい。