彼は乞い、己は願う

復活　　(ツナ/リボーン/数年後/ほのぼの/切ない)

「なぁ、リボーン」
「なんだ、ドン」


書類を片付け、午後の一息のティータイム
今日、共に過ごすのはかつて家庭教師であった漆黒の死神


「俺、言ったよな」
「なにをだ？」


部屋に流れるのは、穏やかな紅茶の香り


「XANXASとの…リング争奪戦でさ『仲間を失うのはいやなんだ』って」
「あぁ、言ってたな。その時、怪我人は出たにしろ誰も敵すら失うことはなかったな」


口含んだケーキは、甘酸っぱく心を和ませる


「うん、やっぱり今でも俺、仲間を失いたくないんだ」
「ふん、お前の場合、もう部下だろ」


誰かが飾った花はマフィアとしては不釣合いで、『彼』にはとても似合っていて


「そうじゃないって。たとえ部下だろうと俺はその上にいるんだ。失うのはいやだ」
「まったく、何時まで経っても俺たちのボスは甘いな」

時計が動き、もうすぐこの穏やかな時間も終わる


「だからさ、死なないでくれよ」
「アルコバレーノとして、少々無茶な願いだが…ま、試してはみるさ」


カチャカチャとカップや皿を片付ける音


「え、本当に？」
「お前は、何時まで経ってもダメツナだからな。傍にいてやらなきゃいけないだろ？」


周囲の音は、何もなく、聞こえるのは互いの言葉のみ


「なんだろ、それ。…ま、いてほしいよ。生きてね」
「ふん、この世界で、絶対は言えないがな」


時計が時間を示し、また書類に取り掛かる


「絶対なんか言わない、いえない。でも、約束な」
「………あぁ」


差し出された小指に、己の小指を絡めた





そして、大空を失ったとき死神は悟る

あの時、なぜ大空にに生きろと、己は言わなかったのだろう

大空は仲間を失うのはいやだと言っていたのに

仲間に、大空は入っていなかったのに



漆黒の死神は、己の頬を伝うものに気付かなかった








＝＝後書き＝＝
大空は、全てを包みこむものだから
全てを包んで、そうした彼を包むものがいないから

その時、大空が何を思ったか、それを知る者もいないけれど