翳りなき橙色

復活　　(Ⅰ世/歴代ボス/切ない/ややダーク)

「　　　　　　　　　　」


それまで微動にしなかった瞼が揺れ、ゆっくりと開かれる。
瞳に映るのは、無。
全てがあり、総てがない。
目を覚ました場所には、誰もいないのに、誰かがいる。
自分と同じ様に覚醒すれば、自然に此処へ集まると知っている。


今までの覚醒は、いずれも次の君が決まる時であった。
『試練』と呼ばれる、この空間。
だがこの空間に来た者は、今では此処に存在する者達のみであった。
空間に来る者は、言わば既に次の君と決まっている。
『試練』を受けるに相応しい者でなければ、此処には入れない。


「…目覚めの時か……」

呟いた言葉に答えるかの様に、傍らで人の気配がした。
気に触れ、覚醒した者。
その数が徐々に増えていくのを感じながら、不意に笑いがこみあがる。
クッ――喉を鳴らし、笑う。それすら、人として異質であるようだった。



「―ジョット…そんなに、次の君はお前が気にする者か？」

様子を見ながらも、他の者も顔に笑みを受かべるのを止める気配はない。
感じた気は、何処までも広がる澄み切ったオレンジ。
この中でも、あそこまで澄んだオレンジを灯す者は、一人しかいない。



「行くぞ」

八つの視線を受けながら、ゆったりと、だが鮮やかに額に炎が灯される。
それを切欠に、次々と炎が灯される。多少の違いはあるにせよ、そのどれもがオレンジと称される色であった。







　　　　杯に注がれるは己の血。

　　　　　 君の声で始まる宴。






＝＝後書き＝＝
あぁ、呪われし血が流れる愛し子よ。
君に血の祝福があらんことを！

「継承」の直前。
前に書いたギャグも好きですが、こういうのも好き。
橙とオレンジは色が違うのですが、いいタイトルが思い付かなかった。