零となった子供

ギアス　(黒の騎士団/R2　25話派生/ダーク)

第99代ブリタニア皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが死に、世界は合衆国として互いに結び合い、安定した世界へと向って既に1年になる。1年の節目として行なわれた平和式典は、合衆国重臣の出身が多い日本で行なわれた。その場には世界中の重臣という代表、黒の騎士団多くのものが訪れそして多くのものが世界の幸福に笑い、これからの幸福へと手を結び合った。しかし悪逆皇帝を殺し世界を平和と導いた象徴ともいえるゼロは、モニター越しの挨拶のみとし直接のその地を踏むことはなかった。

「1年か…長かったな」
「てか、もう1年かよ。なんつーかあっという間だな」

合衆国日本の首相となった扇も既に政界からは引退し、今では合衆国日本の代表の神楽耶の補佐としている。ヴィレッタも無事第一子が誕生し、もう一人をお腹にもうけている。
玉城は黒の騎士団から離れ小さな店を開き、今でも仲間が集う場となっている。

「夢を見てるみたい、って思うの」
「おいおい、よしてくれよ」
「だって、毎日思うのよ」

騎士団のエースパイロットだったカレンも学校を卒業している。
好いた相手と婚約したそうだ。相手はブリタニア人で、仲睦まじい様子が今でも玉城などにからかわれている。

「確かにな」
「藤堂さんもですか？」

藤堂は合衆国日本の軍事のトップに立っていたが今は第一線から退き、世界の軍事の安定と監視を行なっている。千葉は藤堂と共に前線から退き、藤堂の補佐として活躍している。
彼らがする会話は明るいものだが、その足取りは果てしなく暗い。彼らは1年間逃げていた罪に向おうとしているのだから。その場所はこの時期になると警備により一般人の立ち入りは禁止となっている。許可をされたものだけが入れる場所だったが今向っている誰も今まで向おうとはしなかった。

じゃり、と道にある砂を踏む音がやけに響いた。足を止めて目を向けるとそこには石版のような墓が一枚立てられていた。第99代ブリタニア皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア…悪逆皇帝とされるものの墓であった。それを見た瞬間に、彼らの心臓は氷のように冷たく重くなった。

墓であるそれは、知らぬものが見ればそれと知れぬものに見えた。墓やその周囲にペンキで書かれた荒々しい文字、重い何かで殴りつけられたような跡、幾つも見える銃痕。ペンキの文字は鮮やかでその文字の下に必死に消された跡が見て取れた。既に枯れていたが以前は美しく飾られていたと思われる花は無残にも踏みつけられ、石畳には僅かだが果物の残骸が残っていた。

誰も、何も言えないままに立ち竦んでいた。今の時期この場所には警備者と許可されたものしか入れない。だが、ペンキはまだ日がそう経っていないように鮮やかで、逆に無残にされた花や果物は相当な日数が経っている。それが指す真実は、花や果物を供えペンキを消したことは随分と前のことであり、鮮やかなペンキの文字などは警備となるべきものがやった…または警備を怠ったり黙認していたということである。
けれど、そういう行為が為されていた事を自分たちは知っていた。それを見てみぬ振りをしてきたのだから。 その事実に彼らは己への恨みが湧き上がる。ある者はその場に座り込み、ある者は体中が震え続ける。

それでも、誰の瞳からも不思議と涙は零れなかった。まるで許さないかと云うかのごとく、それは枯れたかのように一粒の雫も零れはしなかった。

彼らが対面したのは、憎むべきものでも敬愛するものでもなく、己の罪のみ。たった18歳の少年の全てを踏みにじり、世界が己が今立っているという現実に。少年の時を止めて、未来へと歩む自分に。少年の明日を奪い明日を迎える世界に。
 




　　　零となった子供





＝＝後書き＝＝
世界を愛し、明日を願った小さな子供

嫌なことも(黒の騎士団とか)も詰めこんでみた。断罪話。
こんな未来が、あるんじゃないかな。
自分で書いといてなんだが、酷い話だ(まったくな
彼らにルルーシュの死に対する涙など、謝罪など許しません。

ルルーシュの墓は遺体は『ゼロ』がひっそりと移して墓守してます。
C.C.は知ってるので一年に一回くらい墓参りに来ます。
星刻を出さなかったのは、死んでるから。最終話で生きていてくれたのは嬉しいけど、本編ではそのあと病気で死ぬのを望みたいので。
文字を消したのは咲世子さん、ロイド、セシル、ニーナ。花を捧げたのはミレイ、リヴァル。果物(オレンジ)はジェレミアとアーニャ。


勢いのまま書いたら、何が書きたかったのかわからない。


※2009年6月21日　修正