12.きみと共有するものは、空気とことばと、それともう一つ

＜20000ｈｉｔ感謝企画＞


彩雲国物語　　(影月/香鈴/秀麗/切ない)

既に日は山に隠れ、夜の訪れを表す月が昇っていた。
この地に訪れた時は、一日一日の訪れが早かった気がする。
そう、何も起こらぬ日などないというように巡っていた。
それが、何時しかなくなったのだ。

「影月様」

静かに扉を開けたのは、自分と共にこの地に残ってくれた彼女。
盆の上に夜食を乗せ、静かに歩いくる。
盆の上に2つあるところからすると、彼女も一緒にいてくれるようだ。

『暁時って、散々見たけど…一人きりで見るのは、きっと寂しいわよね』

今は遠い地にいる『彼女』が、ポツリとこぼした言葉。
自分も何時だったか彼女に言ってから、よく傍にいて一人にはしなくなった。
いま、自分は守ると誓った場所に、大切な人と守りたい人と一緒にいたい人と、路を開く方法を師してくれる人と…多くの大切な人に囲まれている。

けれど、『彼女』は―――　…？

彼女の周囲には、きっと守り人もいるだろう。『彼女』を大切に思う人がいるだろう。
だが、『彼女』の隣に立てる人は…いない。
自分が、唯一立てたのだ。その隣に。
けれど、自分はもう『彼女』の傍にいることが出来ない。
今はたった一人で、暁時を見ているのだろうか。
優しく、強くそして弱い『彼女』は…たった一人で、いるだのろうか。




主だった人が殺そうとした、人。そして、主とした人。
優しく、強く、聡明で…自分に弱さを見せてはくれなかった。
それでも、自分は『彼女』が大好きだった。

彼女にとって、自分は守られるものと知っていたけれど、それでも自分も助けたいと思ったのは本当だ。

傍にいると、誓った。
けれど、傍にいたいと思う人が出来たのだ。
笑って心から嬉しそうに喜んでくれた。それを嬉しく思ったのも本当だ。
けれど、寂しく思ったのも…本当だった。

彼女は自分がいなくても生きていける。
知っていた。けれど、寂しいと思う。
巡る思いは矛盾だらけだけれど、偽りなどないのだ。








二人を繋ぐ糸の中に、

　　　　　　　　紅の糸が揺らめく






＝＝後書き＝＝
伝説の紅い糸。
それを結んでくれたのは、確かに彼女なのだ。


恋愛味なしの片思い。
影月も香鈴も秀麗ちゃんを想う気持ちはとても大切なものと。
紅い糸＝運命の糸
名前と掛け合わせて見た…が、どうだろうか；
秀麗ちゃんがいなければ、二人が出会うこともなかっただろう。


「光降る～」の後、「白虹は～」の途中？(白虹は～だけ持っていないので；)
燕青が茶州にいるかいないか微妙なあたり…。