14.まだ言葉というものに怯えたままのぼくから、

＜20000hit感謝企画＞


A.P.H　(香港/日本/中国/捏造/切ない)
 

手を伸ばした先に、望んだのはたった一人。
けれど、己は国ではない。対等に立てない、話せない。
例えどんなに彼がいようとも、その手を自ら伸ばすことが何時も止まってしまう。

「どうしました？」

不自然に伸びた手に気付いたのだろう、他者と話していた彼がこちらを不思議そうに見て声を掛けていた。
その後ろで、話していた者が不満そうに己を見ていた。
そこには主と定めたものも…その視線が誰よりも恐ろしい。そう簡単にはなしえれないだろうが彼が『覚醒』すれば己の存在すら掻き消えてしまう。その余裕もあるのか、未だ『覚醒』することを主はしないけれど。

何もも言わない己の額に彼がそっと手を伸ばして、その手を触れさせていたのに気付いたのが数秒遅れるくらいに自分は心の奥に逃げていたらしい。
決して柔らかとはいえない、それでも美しいと思う手が己の額を撫でるように触れると己よりもやや冷たい手が温度が伝わってきてた。

「熱はないみたいですが…体調が悪いですか？」

そういって、己と主を交互に見る彼の手は未だ己の額にあって己の額と彼の手の温度が混ざり合うようなそんな感覚に陥った。

「別になんでもないと思うあるよ。我も特に体調不良じゃないあるからね」

主が彼と己に近づいてくるのが視界に入った。それに瞬時に身を固めた己に彼は気付かないけれど。

「…どうかしたあるか？」
「…何でも、ありません」

近づいて己の頭に触れるその手に何も成すことも出来ず、ただ感受することで己と主を見ている彼が安心し高のように息を吐いているのがわかった。
いつのまにか、己の額にあった手は消えていた。

「お前が気にすんなある。我たちは大丈夫ね」
「ご心配を、お掛け致します」

「慣れぬことも多いでしょうし、疲れが出ているのでは？」

そう言って苦笑いをする彼を見、己を横目で見た主が頷いているのに否定の言葉もいえない己がいた。

「まぁ、そうあるね。我はこいつを連れて帰るあるよ。失礼するね」
「申し訳ありません、失礼致します」
「えぇ、中国さんまた。香港さんも無理為さらないで下さいね」

彼に礼をして、先を行く主の後ろについて彼に背を向ける。
先を行く主の顔も、後ろで見送る彼の顔すら見ることも叶わず、未だ己の言葉を彼に伝えることも叶わず。
ただの挨拶ですら、彼に向ける時には己は声が震えていることに気付くことはなかった。




許されぬと知っているから、
　　　　　　　
　　　　　　　自分は恋をしたのだろう




＝＝後書き＝＝
恐怖ではない、それでも彼の前では言葉が詰まる。
貴方に捧げたい言葉は、山とあるのに。

香港捏造。
香港書くにはやっぱり中国が必要だと思った。
口調は敬語がいいです。
無意識に中国にーにを主と意識しちゃって(特区ですし)、そして意識的に恐怖を与えるにーにが書きたい。
別ににーにと日本はくっついてません。これも片思い…が、親愛に近い。