喪失宣言

黒子　(第128Qネタバレ/キセキ/黒子)

『今、勝つんだ！』


黒子の叫びが、その場にいたキセキの世代全員に響いた。
同じ目標を持ちながらそれぞれ違う学校で、互いを倒す道を選んだ自分達。

帝光時代、あれ程感情を露にした黒子を見たことがない。
試合中も、日常でも…誰一人。
最後に黒子が見せたのは、最後の全国大会を圧倒的な力で優勝した時。
あの時の―――まるで涙を流しているかのような、微笑み。
一瞬で消え去ったから、誰もが見間違いだと思った黒子の感情。

あれが一番、彼が自分達に向けた表情の中で最も強かったと、優勝後に誰にも言わず部を去り、誰もが捕まえられなく卒業してから…初めて知ったのだ。

そして、誠凛とバスケをする黒子を見る度に思うのだ。
何時から――自分達は、彼と彼らと笑いながらバスケをすることをしなくなったのか。
何時からと、誰もが覚えていなかった。
勝利のみを目指し、勝ち続けた帝光時代。

最初からそうであった訳ではなかった。笑いながら、ふざけながら、時には怒られながら過ごした日々が、あったのだ。
パスが繋がった時の高揚感を、シュートが入った時の感動を、カットが成功した時の嬉しさを―――彼からパスを貰った瞬間の喜びを。

当たり前となり、それに動かされる感情を失ったのは―――バスケを楽しいと笑いあうことをしなくなったのは―――何時からだ？

黄瀬が小さく俯き
緑間が大きな拳に力を込め
紫原は手に持ったお菓子を落とし
赤司は歯を噛み締め
青峰は、一瞬その動きを止めた


自分達は、何時から―――――彼の微笑みを失ったのか



　喪失宣言




■□後書き■□

何時からだろう、それすら僕らは覚えていない

今週の黒子の台詞が素敵過ぎました。
あの台詞に絵に、誠凛メンバー全員の想いが入っていて、正直にカッコいい…と思いました。
紫原と赤司は特によくわからないので、捏造になりますが…。
誠凛でバスケをする黒子は『キセキ達が失った黒子』ではないかと、思いました。