砕かれた紫水晶

ギアス　(ルルーシュ/シュナイゼル/その他/本編23話派生/ダーク/死)

※殺すなどの表現があります。誰も救われませんのでご注意を。
 

神聖ブリタニア帝国にエリア11で反逆を起こしたゼロ。
その正体は、既に鬼籍であるブリタニア第11皇子、第17継承位であったルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであったというのは、上層部の中でもほんの僅かなもののみである。

上層部に位置するもので、一際異質である者達は以前ゼロを中心としてブリタニアに反逆をしていた黒の騎士団の者達である。
その者達の前に、今繋がれて身動きを取れないいるのは…ゼロ。

「お前が、原因だったんだ！」
「仲間を見殺しにし、私達を駒にした！」
「許せねぇ、死んでも許さねぇ！」

そういって、目を隠され動くことも叶わぬ者に罵声を浴びせる。石があれば投げつけるほどの剣幕であった。
それを静かに横で見ていたのは、第98代ブリタニア帝国皇帝シュナイゼル・エル・ブリタニアであった。

「そろそろ、時間だ。いいかな？」

その声に罵声は止まり、一瞬の静寂のあと無機質な音が響く。

「さようなら、ルルーシュ。我が最愛の弟」

そう言って、静かに振り下ろされた手。
無機質な音が、無数に響いた。

血が舞い、先程まで罵声を浴びせていた者たちが息を呑む。

そこには、血に塗れた女が一人。

「し、つ……」

ゼロの傍らで同じく拘束されていた少女に向けられて放たれた銃弾。
少女から舞った血がゼロの身体を覆った。
既に少女は、物言わぬ亡骸。

少女の血に塗れたゼロは、全身に掛かる生暖かいそれに、響いた音に身体を震わせていた。
そして、血に塗れた少年の額にギアスと言われるものの紋が浮かび上がる。

「ああぁぁああぁあああぁーーーーーーーーー！！」

悲惨な叫びに、誰も手を貸すこともなく。
彼の身体は作り変えられる。外見に大きな変化はない。けれど少年の体の中では、何もかもが作り変えられていた。血が、内臓が、細胞が全て。
その光景に、シュナイゼル以外の者は驚愕で瞳を大きくする。
絶叫をして意識を手放した少年の身体から拘束具を外し、シュナイゼルはその身体を抱き上げる。

「な、にがおこった…んですか…！」

赤髪の少女が顔を青褪め、震える身体で一歩踏み出して問いかける。

「ルルーシュは死んだよ。彼はL.L.、神への生贄だよ」
「いけ、にえ…？」
「そう、ブリタニアという国は終わった。これからは新たな国が世界を支配する。その為に世界は生贄を欲するんだよ」
「何言って…」
「最初から、そうだったんだよ。その為の戦い。ルルーシュは知らなかったけれど、この子は最初からその為だけに此処にいたんだ」
「…最初、から？」
「前代の生贄であったC.C.から全てが彼に継承された。彼はこの新たな国が終わるまで、憎むべきこの国を永久に見守らなければいけない」
「御伽噺…でしょ」
「そう聞こえるだろうね。けれど、真実なんだよ。彼のこの身体は国が終わるまで不死となる」

証拠だ、と言ってシュナイゼルは持っていた短剣でルルーシュの腕を切りつけた。
ヒィッ…何処からかそんな声が響いた。だが、血は流れてもその傷はありえない速さで血を止めていった。

「もう、彼は化け物だからね。人に捨てられた子は、何も役に立たない子はせめて生贄にくらいなってもらわないとね」


血塗られた身体を抱き上げ、シュナイゼルは悠然と微笑んだ。

「君達に、私とルルーシュの違いを教えてあげよう」

その微笑みの真意に、気付いた者はいなかったのだ。

「彼の敗因は、優しすぎたことだよ。己すらキングの駒と扱う。私は支配者(マスター)となって操っていたからね」







盤上から消えたキング






＝＝後書き＝＝
本編23話派生だけど、原点に戻ってみた。
第一期の頃はC.C.がブリタニアの守護とか思っていたから…全く変わったブリタニアの守護にルルーシュを祭り上げるシュナ様。
誰も何も救われない。
憎んでいる国を、終焉まで見届けなければいけない。それは何よりも辛いことだろう。
スザク、ジェレミア死んでます。殺された。(詳しく考えていない)