空を切る

夏戦争　(健二/ラブマ/切ない？)

『残りのアバターは2です。』

(あと２つ…)

無機質な画面に表示された画面に、胸を撫で下ろした。
不意に思い起こした画面に、疑問が浮かんだ。
それはあの夏の事件が終わってしばらくしてことだった。

「あ、れ…？」

自分のアバターは他のアバターを取り込むなんて芸当はない。
なのに、なぜそんな自分のアバターを選んだのか。
もっと有能で、たくさんのものを使えるアバターを持っていたにもかかわらず。

「…なんで……？」

数学は正解は1つしかない。自分はラブマシーンのメールをたった一桁間違えた。
けれど、それだけのことで間違いとなる。数学はそういうものだ。
あのラブマシーンが、そんなミスを犯した自分…そのアバターを使う意味がわからない。

考えてみれば、おかしなものだ。
自分はあの問題を間違えた。しかし、メールを返した人間のアバターはラブマシーンに乗っ取られた聞く。
けれどなぜ自分のアバターだったのか。あの問題を正確に解いた者は55人いるのに。
答えた人間が有能であるのは、確かなのに。
アバターと本人に直接繋がっている訳ではない。けれども、あれに答えた人間のアバターはたぶん学生の自分より大人で、アバターだって自分のものよりよほど勝手も利いただろうに。

あの騒ぎの渦中にいたアバターは、自分のだけだった。

むしろ最後になった時点で、アバターに入り込んで乗っ取るよりもラブマシーンはデータとして逃げた方がよっぽど手っ取り早かったはずだ。
アバターのデータよりも、データとしての量が遥かに微量で構成前になればなるほど見つけにくいのは当然だろう。



今は、騒がしくも静かに流れる画面を見ながら考えることしかできなかった。


「ラブ、マシーン……？」



（健二…、ワタシハ…）






□■後書き□■

なんでラブマシーンは健二のアバターつかったのか。
あの問題を正確に答えた人がいっぱいいて、たくさんの人が返信して、ただの学生である健二のアバターを使う意味。
ってことで、ラブマシーンと健二です。
かわいいですよね…うん、2人が仲良しとかいけると思います。
(だって、最後何にも触れられなかった…自我を持ってたのなら、なおさら切ない)

って、去年の8月に書いたものを手直し。
当時は初見で、矛盾とかを修正しました。 健二(人)とラブマシーンが好きです。


※2010年8月7日　作成
　2011年5月29日　修正