雨の意味

ギアス　(星刻/天子/ルルーシュ/パラレル/切ない/死)

禁嬪と同設定。詳しい設定は禁嬪の後書きにて。

どうか、どうか君に幸あれ



「ル、ルーシュ…」

雨がただただ降り注ぐ。
雨を降らせてはいない、ただ己の感情が沸き立つように止まらない。それと共に雨が大地に降り注ぐ。
目の前に広がる赤が雨によって流される。それでも未だ流れる雨に赤は混じるのをやめない。

止まらない、止まらない、止まれ…！

赤の沸き立つのはたった一人の少女。
紫水晶の瞳は縁取られた瞼に閉ざされ、真珠のような肌はその白さに青が塗られた様に、薔薇のように鮮やかな唇からはまるで色が流れ出るように朱の色が流れ出ている。

閉じられた瞳を見たいと、幾ら願おうとそれが叶わぬものとなった。

人の業によりこの地に降り立ち、人の業によりその身は暴力に曝された。
その地で年下の友と出会い、己と出会った。
幸せだと笑った少女は、己からすれば瞬くほどの時しか生きていない。その中でも、忘れるほどの時しか幸福を得なかった。
そしてその笑みすら、人の業により奪われた。

願い事の仕方も、約束の仕方も、知らない少女。
友も家族も、抱き締められることも忘れた少女。

それでも幸せだと、言った少女。




今生での君に幸あれ

来世での君に幸あれ



その笑みに、何時しか忘れていたのだ。
時折憂いる瞳を見る時にだけ思い出すほどに。
思い出すほどに、一人の少女に自分は溺れていた。

使命も、名も、時すら捨て去って少女と生きたいと願ってしまったのだ。

けれど自分はそれが出来るほど強くはなかった。それがわかっているからこそ、少女は憂いの視線を己に見せたのだろう。
自分が忘れぬようにその瞳を向けていたのだろう。

共に在りたい、そう願っていた少女は自分などよりもずっと未来を見ていたのだ。

嘆いただろう、信頼したものが共に歩めぬということに。
怯えただろう、未来で共に在れぬことに。
涙しただろう、忘れさせぬ為に己を捨て去ることを。


死した先に誰が待っている？と問うた少女。
小さな友は、家族や大切な人と答えていた。

その答えに、寂しそうに笑った少女の顔を見たのは何時だ。
未来がないと言った彼女に、幸福を初めて知った彼女に、誰が待つというのか。それに気付いた愚かな自分は何処だ。


その瞳が、命が閉ざされた時に傍にいた自分は…何だ。



何時か、何時かずっと遠く、

君と自分とが共にいられる幸を願う


その地に住まう人々は、恵みの雨に喉を潤しそして歓喜したという。
だが、雨の勢いは止まらずそれは恐怖の雨となった。
人は飲まれ、建物は破壊され、地は沈んだという。

それでも生きた者たちは、天子と言われる少女を筆頭に立ち上がった。
土地に新たな種を蒔き、人が生まれ、時が進んだ。

天子はこの雨を『業の雨』と言ったとされる。
この雨に最初に消えたのは、一人の少女でありその死に悲しんだ龍の涙が大地へと降り注いだと。
人の業によりその命を終えた少女を、天子は『最愛の友』と呼んだ。
けれど、その姿は龍の姿と共に後世に残ることはなかった。


天子は死す時、龍と友との約束の証をその手に形づくり死したとされる。




＝＝後書き＝＝
人間ルルと龍の星刻のエンド。
バッドエンド。(本編シリアスなんだから普通はハッピー書くよね)

雨は恵みを齎すものであり、そして滅びを齎すものである。
を星刻にはやらせたかった。
本編は、あまりに自然という摂理を忘れさせるものだから。

約束の仕方は、本編星刻が天子に教えた(らしい。MADは見たけど本編知らない←)のを天子がルルーシュにした…というの。
約束をしたことが、ない少女。
天子とルルーシュは仲良しです。天子と星刻でルルーシュの取り合いしてればいいよ(←

来世…ではないだろう、それでも遠い未来。
ただ人として巡り合う彼らは、そこにいるだろう。

本格的に書きたい。