2007.10.29. 開設 日々徒然と二次創作、オリジナルなどを書いていこうかと。 コメント大歓迎、荒らし厳禁。 詳しくは説明にて。
+ + + + + + + + + +
「一兄ー?」
一護の部屋で死神たちがこれからのことを相談している最中、部屋の外から一護を呼ぶ声が聞こえた。
それに「悪い」と言いながら、部屋を出た一護の姿に声の主がわからない死神たちは最も一護といる時間が長いルキアに目を向けた。
「ルキア、今のは誰だ?」
「一護の妹です」
義兄である白哉が問いかけると、ルキアは階段を下りていく一護の足音を聞きながら(そういえば、知らなかったか…)と思いながら答えた。
「妹?アイツ妹がいたのか」
更木が意外そうに思いながらも、確かにやちるの扱い…年下に接するのが慣れていたと思い出す。他の死神たちも意外そうに、けれどどこか納得した面持ちでいた。
その時、一護の扉の前で止まった霊圧を感じ扉に目を向けると遠慮なく扉が開いた。
「ああ…やっぱりあんた達か」
そこには、黒髪のどこか一護と似たような顔を持つ少女が睨むように死神たちを見ていた。
「夏梨…殿?」
今までに見たことのない様子に戸惑いながら、ここまで異様な集団がいたら怪しむか…と今更ながらに後悔をする。
「ルキアさんに、冬獅朗までいるとはね…」
現世に降りた時に偶然知り合い、少女の霊力の高さを知り多少なりとも親しい日番屋ですら、今までに見たことのない少女の嫌悪の混じった様な瞳に驚きを隠せなかった。
他の者たちは、まず普通に自分たちを視ることができる少女に驚きの眼差しを向けていた。
しかしその疑問を口にする前に、少女からその答えが口にされた。
「あぁ、あんた達のこと視えるよ。一兄ほどじゃないけど、一兄があんた達の世界に行く前から、一兄が死神だってこと知ってたし。虚だっけ?あの化け物も視えるから」
平然と出された答えに、一瞬死神たちの誰もが身を凍らせた。
普通の霊が視える程度であれば、多くはないにしろ人間にはいる。けれど、死神そして虚まで視える人間というのは稀有だ。
その筆頭が彼女の兄であることを、この場の誰しもが知っていた。
そして彼の霊力に導かれるように、力を得た仲間を知っていた。
「別に、あんた達が何しようと関係ない…けどね」
一旦言葉を区切り、睨みつけていた視線を一瞬足元に向けてから、勢いよく顔を上げ先ほどよりもよほど強い視線で夏梨は死神たちを睨みながら言い切った。
「これ以上、一兄を巻き込まないでよ!!」
「前の戦いで、一兄…勝ったんだろ?あんた達だれも敵わなかった奴に」
彼女の悲痛と嫌悪を滲ませた瞳は今にも涙を零しそうであった。
けれど、夏梨は睨む視線を一切緩めなかった。
「それは、確かにそうだが…!」
恋次が、確かに自分達が勝てなかった存在を倒し、浦原が封印した…それは真実だった。
けれど、と言葉を続けようとしたところを遮り少女の言葉は続いた。
「それで、徐々に霊力なくなって…霊力、なくすんだろ?あの戦いの所為で、一兄は」
真っ直ぐと射抜く視線に、決して嘘をつけぬと知り死神の誰しもが恐れたことであった。
何時果てるとも知れない…その霊力。本人すら失うことを恐れている、それ。
けれど、そのことすら少女にはお見通しだったらしい。
「もう、いいじゃないか!あんた達はこれ以上、一兄に何を求めるの!?」
―― 何も ――
―― ただ、彼の子がこれ以上哀しまぬように ――
―― 笑顔で、いられるように ――
「一兄は、あたしの兄貴なんだよ…!!家族なんだよ…!」
ついに流れ出した涙。けれど、彼女の言葉一つ一つにある懇願を、問いを誰しもが答えられなかった。
応える術すらなかった。
「家族なんだ、大事な!生きてる…だから、もういいだろう…!?」
大切だと、目の前の少女は叫んでいた。
心が、体が、魂が。
自分達は、決してそんな風に叫ぶことはできない。彼の力を求めながら、彼が本当に危機に陥った時、それと比べるものがある自分達は、彼女のようにすべてを持って彼を求めることなどできないのだ。
震える拳で、涙を流しながら何時しか少女は部屋を出て行っていた。
それに気づかぬ程、気づいても何も出来ぬ程、彼女の言葉は自分達を凍らせたのだ。
凍てつく涙に、何を想う
□■後書き□■
兄鰤320話より派生。
一護の部屋にそんな隊長格わんさかでいいのか…!
斬魄刀の時があったから、まさかな…と思ったけど、やっぱりそこに集まるんですね!
浦原商店の地下とか広いところはもっとあるだろうに、ね!!
で、家にいるところから妄想。
ぶっちゃけると、原作の代行消失篇の初期だかに考えたものです。
最初は、啓吾だった…で、今回家にいるので夏梨に変更。たつきとかとも迷ったんだけど家だし。
大切だと想う気持ちは同じでも、決して相容れぬものがあるのだと。
涙に関する5題 (追憶の苑)
一護の部屋で死神たちがこれからのことを相談している最中、部屋の外から一護を呼ぶ声が聞こえた。
それに「悪い」と言いながら、部屋を出た一護の姿に声の主がわからない死神たちは最も一護といる時間が長いルキアに目を向けた。
「ルキア、今のは誰だ?」
「一護の妹です」
義兄である白哉が問いかけると、ルキアは階段を下りていく一護の足音を聞きながら(そういえば、知らなかったか…)と思いながら答えた。
「妹?アイツ妹がいたのか」
更木が意外そうに思いながらも、確かにやちるの扱い…年下に接するのが慣れていたと思い出す。他の死神たちも意外そうに、けれどどこか納得した面持ちでいた。
その時、一護の扉の前で止まった霊圧を感じ扉に目を向けると遠慮なく扉が開いた。
「ああ…やっぱりあんた達か」
そこには、黒髪のどこか一護と似たような顔を持つ少女が睨むように死神たちを見ていた。
「夏梨…殿?」
今までに見たことのない様子に戸惑いながら、ここまで異様な集団がいたら怪しむか…と今更ながらに後悔をする。
「ルキアさんに、冬獅朗までいるとはね…」
現世に降りた時に偶然知り合い、少女の霊力の高さを知り多少なりとも親しい日番屋ですら、今までに見たことのない少女の嫌悪の混じった様な瞳に驚きを隠せなかった。
他の者たちは、まず普通に自分たちを視ることができる少女に驚きの眼差しを向けていた。
しかしその疑問を口にする前に、少女からその答えが口にされた。
「あぁ、あんた達のこと視えるよ。一兄ほどじゃないけど、一兄があんた達の世界に行く前から、一兄が死神だってこと知ってたし。虚だっけ?あの化け物も視えるから」
平然と出された答えに、一瞬死神たちの誰もが身を凍らせた。
普通の霊が視える程度であれば、多くはないにしろ人間にはいる。けれど、死神そして虚まで視える人間というのは稀有だ。
その筆頭が彼女の兄であることを、この場の誰しもが知っていた。
そして彼の霊力に導かれるように、力を得た仲間を知っていた。
「別に、あんた達が何しようと関係ない…けどね」
一旦言葉を区切り、睨みつけていた視線を一瞬足元に向けてから、勢いよく顔を上げ先ほどよりもよほど強い視線で夏梨は死神たちを睨みながら言い切った。
「これ以上、一兄を巻き込まないでよ!!」
「前の戦いで、一兄…勝ったんだろ?あんた達だれも敵わなかった奴に」
彼女の悲痛と嫌悪を滲ませた瞳は今にも涙を零しそうであった。
けれど、夏梨は睨む視線を一切緩めなかった。
「それは、確かにそうだが…!」
恋次が、確かに自分達が勝てなかった存在を倒し、浦原が封印した…それは真実だった。
けれど、と言葉を続けようとしたところを遮り少女の言葉は続いた。
「それで、徐々に霊力なくなって…霊力、なくすんだろ?あの戦いの所為で、一兄は」
真っ直ぐと射抜く視線に、決して嘘をつけぬと知り死神の誰しもが恐れたことであった。
何時果てるとも知れない…その霊力。本人すら失うことを恐れている、それ。
けれど、そのことすら少女にはお見通しだったらしい。
「もう、いいじゃないか!あんた達はこれ以上、一兄に何を求めるの!?」
―― 何も ――
―― ただ、彼の子がこれ以上哀しまぬように ――
―― 笑顔で、いられるように ――
「一兄は、あたしの兄貴なんだよ…!!家族なんだよ…!」
ついに流れ出した涙。けれど、彼女の言葉一つ一つにある懇願を、問いを誰しもが答えられなかった。
応える術すらなかった。
「家族なんだ、大事な!生きてる…だから、もういいだろう…!?」
大切だと、目の前の少女は叫んでいた。
心が、体が、魂が。
自分達は、決してそんな風に叫ぶことはできない。彼の力を求めながら、彼が本当に危機に陥った時、それと比べるものがある自分達は、彼女のようにすべてを持って彼を求めることなどできないのだ。
震える拳で、涙を流しながら何時しか少女は部屋を出て行っていた。
それに気づかぬ程、気づいても何も出来ぬ程、彼女の言葉は自分達を凍らせたのだ。
凍てつく涙に、何を想う
□■後書き□■
兄鰤320話より派生。
一護の部屋にそんな隊長格わんさかでいいのか…!
斬魄刀の時があったから、まさかな…と思ったけど、やっぱりそこに集まるんですね!
浦原商店の地下とか広いところはもっとあるだろうに、ね!!
で、家にいるところから妄想。
ぶっちゃけると、原作の代行消失篇の初期だかに考えたものです。
最初は、啓吾だった…で、今回家にいるので夏梨に変更。たつきとかとも迷ったんだけど家だし。
大切だと想う気持ちは同じでも、決して相容れぬものがあるのだと。
涙に関する5題 (追憶の苑)
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プロフィール
HN:
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性別:
女性
職業:
学生
趣味:
ネット、読書、写真
自己紹介:
腐のつく属性。でもノーマルも大好き。
成人者の高卒者。
最高学歴は専門学校です
熱しやすく、冷めにくい。むしろ、いつも煙はでている(笑)
性格は社会的には真面目(というより面倒見がいいらしい)、でもすごい優柔不断で酷い奴。自分に自信が持てない。
【現在一押しジャンル】
鰤
【近状】
高校卒業。
4月から歯科衛生士の専門学校
ブログ統合終わってるのに、いい加減削除しようよ自分。
【在中ジャンル】
遊戯、復活、ギアス、APH、彩雲国、マイネ、鰤、セラムン、ギアス、名探偵、愛盾21、ぬら孫、ポケ、TOA、夏戦争
【案内】
中心…小説一覧。最上記事。
日記…徒然なるままに。感想から日々まで。
欠片…独言。オリジナル・詩など。
小話…二次創作の短文過ぎるもの。
バトン…言わずなが。
物語…二次創作のやや長めの作品。
遊戯…遊戯王の作品・作品関連など(13作品)
企画…企画。現在2万hit企画お題作成(7作)
戴物…リクエストして頂いた作品。(宝!)
説明…ブログの説明。
成人者の高卒者。
最高学歴は専門学校です
熱しやすく、冷めにくい。むしろ、いつも煙はでている(笑)
性格は社会的には真面目(というより面倒見がいいらしい)、でもすごい優柔不断で酷い奴。自分に自信が持てない。
【現在一押しジャンル】
鰤
【近状】
高校卒業。
4月から歯科衛生士の専門学校
ブログ統合終わってるのに、いい加減削除しようよ自分。
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遊戯、復活、ギアス、APH、彩雲国、マイネ、鰤、セラムン、ギアス、名探偵、愛盾21、ぬら孫、ポケ、TOA、夏戦争
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中心…小説一覧。最上記事。
日記…徒然なるままに。感想から日々まで。
欠片…独言。オリジナル・詩など。
小話…二次創作の短文過ぎるもの。
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遊戯…遊戯王の作品・作品関連など(13作品)
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