04：今の私が望むこと (あなたには言えない5題)

マイネリーベ　　(ナオジ/ルーイ/革命前夜/切ない)
メリーさまへ、捧ぐ。

深夜。
雲一つないのに、月は見えなかった。

明日、自分達はこの学園を卒業する。
薔薇の園から飛び立ち…各々の道を行く…筈である。

音もなく静かに、扉が開いた。
木刀を取り、扉に視線を向ける。

「私だ、ナオジ」

暗闇から現れたのはルーイであった。
彼だとわかると、木刀を置き部屋に勧める。
部屋の椅子に座り、彼はじっとナオジを見た。

「明日だ、ナオジ」
「はい」
「…良かった、のか？」
彼の問いは、他の者から見れば卒業式を示している様に見える。
だが、続いた言葉は卒業式ではある筈の無い言葉。
「…まるで、脅迫の様に言った貴方が、それを訊きますか？」
苦笑をしながら、相手を見る。
彼の眼差しには揺らぎは、ない。

「そうだな。だが…考えるのだ。もし、お前が断っていたら、と…」
「けれど、私は選びました。だから、大丈夫です」
ルーイがナオジへと視線を向ける。ナオジの瞳には真剣で…そして温かな光が宿っていた。
「祖国の為、クーヘンの為…私は、どちらも大切です。だから、選んだのです」
「…そうであったな」
「その事を言った貴方が、その様に不安を内に抱え込んでいては、周りにも影響が出ますよ」
その言葉に、静かに目を閉じた。

「……今だけは、こうしていてくれ」
そう言うと、彼はナオジを抱きしめた。
驚いたナオジだが、彼の体が僅かに震えているのに気付く。

「貴方も、不安なのですね」
彼に抱きしめられ…否、ナオジも落ち着かせる様に腕を彼の背に回した。


「これからすることは、今まで異常に茨で覆われている道を歩むでしょう」
「ああ」
ナオジの言葉に静かに言葉を返す。

「この世で必ずしも上手くいくことなんて、ありません。大切なものを失うかもしれません」
「ああ」
その言葉は、何処までも真実。

「後悔は、するかもしれないでしょう。『あの時こうしていれば…』と」
「ああ」
心に刺さる棘。

「絶対に上手くいくとは限らない。失敗し、己が死ぬかもしれない」
「ああ」
真実。言っている彼ですら恐怖を感じる言葉。

「例え成功しても、罪人となるかもしれない」
「ああ」
どの可能性も捨てきれない、現実。

「それでも、今わたしが進むと…望んだ道は…貴方と共に歩むこと」
「………」
不安を、打ち消すような言葉。


「ナオジは、私の共にいてくれるのだな」
「ええ。永遠ではないでしょう。けれど、今の私が望むことです」

微笑みながら、真っ直ぐ視線を合わせて言う。
静かに重なったのは、互いの髪だけか、それとも…？


月は、出ていない。
彼等を見守るのは、

テーブルの上に乗っている薔薇の花束だけ。



赤薔薇の葉――貴方の幸福を祈る

薔薇の葉――あなたは希望を持ち得る




満開の花と2輪の蕾――秘密




Fin.


＝＝後書き＝＝

大変遅くなりまして、申し訳ないです…orz
メリー様リクエスト『ルイナオ』…ルイ＋ナオ…？
リクに沿ってない…。ちなみに、革命前夜です。
ちなみに、この小説はあのチャットでリクエストされた小説＋1でお題を使って繋がっている形で作っています。
1つでも一応読めるようには…して…？

 

本当にお待たせしました。どうぞ、お受け取り下さい。


追憶の苑（http://farfalle.x0.to/)
あなたには言えない5題　より

 

 

08年2月5日